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商取引に対する商法と民法との違いとは?

 

商法には商人(プロ) 同士の取引における規定が記されています。商人同士の場合は確実で円滑な取引が求められるため、民法の規定ではなく、特別に定められた商法の規定が適用されます。

 

商行為における承諾の規定

商行為における承諾には以下の規定があります。

 

・商法第507条:商人である対話者の間において契約の申込みを受けた者が直ちに承諾をしなかったときは、その申込みは、その効力を失う。

 

・商法第508条:商人である隔地者の間において承諾の期間を定めないで契約の申込みを受けた者が相当の期間内に承諾の通知を発しなかったときは、その申込みは、その効力を失う。

 

企業の営業において停滞は機会損失につながるため、商法では速やかな措置が採られています。

 

一方、民法では「承諾の期間を定めないでした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない。

 

ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。」(民法第525条)とされています。

 

商法では「相当の期間内に承諾が無ければ効力を失う」であり、民法の「相当な期間を経過すれば撤回できる」とは大きく異なります。

 

・商法第509条:商人が平常取引をする者からその営業の部類に属する契約の申込みを受けたときは、遅滞なく、契約の申込みに対する諾否の通知を発しなければならない。2.商人が前項の通知を発することを怠ったときは、その商人は、同項の契約の申込みを承諾したものとみなす。

 

509条では、日常的な取引業者から発注があった場合、遅滞なく諾否の通知をしなければ、注文を承諾したとみなされます。

 

「遅滞なく」であるため、発注先は数日のうちに承諾と判断しても良いことになります。ちなみに、「みなす」という言葉には非常に強い力があります。

 

そこで、企業の中には、新たな業者と取引を始める際の基本契約書に『甲が発注を受けてから5営業日以内に諾否の回答をしない時は、甲は当該発注を承諾したものとみなす」という条項を記述するところがあります。

 

商行為の代理規定

商行為の代理については商法504条で以下のように規定しています。

 

・商法第504条:商行為の代理人が本人のためにすることを示さないでこれをした場合であっても、その行為は、本人に対してその効力を生ずる。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知らなかったときは、代理人に対して履行の請求をすることを妨げない。

 

民法では、代理人が代理行為(代理取引) をする際には、相手に対して依頼人のためにすることを示さなければなりません。

 

これを「顕名主義(けんめいしゅぎ)」と言います (民法第99条) 。

 

また、依頼人の氏名を明示しなくても、周囲の事情から依頼人が誰であるかを推知できればよいとされています。

 

一方、商法では代理人が依頼人のためにすることを示さなくても、原則として依頼人に効力が生じる「非顕名主義」が採られています。ただし、相手が代理行為であると知らなかった時は、代理人に履行を請求できると規定されています。

 

商取引における債権の利息と消滅時効

商人間における金銭債権は約定の無い限り、貸主は年6%の法定利息を請求できます。

 

また、商行為によって生じた債権は原則として5年間行使しないと、時効によって消滅します。

 

・商法第514条:商行為によって生じた債務に関しては、法定利率は、年六分とする。

 

お金借りるなどの金銭貸借において、その利率を法律によるものとする場合は法定利率となり、当事者間の合意で定める場合は約定利率となります。

 

法定利率は個人と個人の契約の場合は民法で、商人と商人の間での契約は商法でそれぞれ定められており、前者は年5%、後者は年6%となっています。

 

この法定利率は貸金業者に対する過払い金返還請求においても適用されます。

 

そこで、過払い金の返還請求における利率は民法が適用されるのか、商法なのかという疑問が残ります。

 

貸金業者は商人であるため、商法の利率が採用されると思われがちですが、借り手が消費者であるため、民法の5%の利率が適用されます。

 

なお、商事債権の消滅時効は5年となっていますが(商法第522条)、民法では消滅時効が2つに分かれています。

 

・民法第166条:債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一、債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
二、権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。

 

「知った時から」というのは権利の行使が可能ということを「認識」していることを意味し、「できる時から」というのは例え、債権の行使が可能ということを知らなかったとしても10年で債権が消滅するということです。

 

法律には「一般法」と「特別法」があります。一般法は広い範囲を網羅する法律であり、特別法は一般法だけではカバーしきれない部分のみに特化した法律のことを言います。民法は一般法で、商法が特別法になります。

 

一般法を基にさらに細かい規定を定めたのが特別法ですが、事案によっては民法と商法の規定が同時にかぶることがあります。その場合は特別法である商法の規定が優先されます。

 

商法と民法の違いまとめ

まとめとして、商法と民法の違いについては以下のような点が挙げられます。

  1. 商法は商行為に関する法律である一方、民法は民事全般に関する法律であるため、商法は商取引に特化した法律であると言えます。
  2. 商法は契約の自由を原則とし、商人同士の契約には法律上の優越性が認められています。つまり、商人同士の契約においては、民法における消費者保護のような制限があまり課されないことがあります。
  3. 商法は商行為の代理規定について詳しく定められています。商人は、代理人を通じて契約を締結することができます。また、代理人が商人の権限を超えて契約を締結した場合でも、商人はその契約を拒否できる権利が認められています。
  4. 商法は、商取引における債権の譲渡や担保設定に関する規定が民法よりも詳しく定められています。例えば、売掛債権を金融機関に売却することができる「売掛債権ファクタリング」については、商法に詳細な規定が定められています。
  5. 商法には、商取引における不正競争行為や商標権の侵害など、商取引に関する独自の法律規定が存在します。これに対して民法には、物権法や債権法など、一般的な民事法律規定が存在します。

 

以上のように、商法と民法には、商取引に特化した法律であるか否か、契約の自由の度合い、代理規定や債権譲渡に関する規定の詳細度、商取引に関する独自の法律規定の存在などの違いがあります。

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